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法人の自己破産について

今回は、株式会社、特例有限会社(以下、「法人」と総称します。)が経営に行き詰まり、自己破産を申し立てる際の注意事項につき、個人破産との相違点を中心に説明いたします。
本稿をご覧になるにあたっては、本年1月のリレートーク【借金が支払えなくなったとき(個人の場合)】もご参照下さい。なお、本稿はあくまで自己破産申立ての概要につき説明を行ったものに過ぎず、個々の事案によっては下記以外の点が問題となることも多々ございますので、実際に自己破産申立てを行う際には、事前に弁護士に相談することをお勧めします。

1 破産手続開始原因について
如何なる場合に法人が自己破産申立てをなしうるかという問題です。これを法的には「破産手続開始原因」といいます。
まず、債務者が、支払能力に欠けるために、債務を一般的かつ継続的に返済することができない客観的状態に至った場合(これを「支払不能」といいます。)には、個人、法人を問わず、破産手続開始原因に該当します。
そして、法人特有の破産手続開始原因として、「債務超過」、すなわち債務額の総計が資産額の総計を超過している場合が定められています。
つまり、法人については、債務を返済することが事実上不可能となるに至らなくとも、その債務総額が所有する総資産の価値を上回ったことをもって、自己破産申立てをなし得るのです。

2 取締役会決議等について
自己破産申立ては、法人の存続に関する重要事項として、適式な手続に則って行われることが要請されます。
そこで、法人の自己破産申立てについては、取締役会決議又は取締役全員の同意を得たうえ、代表取締役がこれを行うことが必要となります。

3 破産管財人について
法人の自己破産手続については、原則として破産管財人が選任されることとなります。
破産管財人とは、中立公平な立場において、破産者の財産を管理し、これを換価したうえ債権者に配当を行うこと等を職務とする機関であり、裁判所によって選任されます。
なお、破産管財人が選任される場合には、破産申立てにあたり、破産管財人が上記職務を行うに必要な費用、破産管財人の報酬等として、数十万円から数百万円程度を裁判所に予納する必要があります。
そのため、法人が自己破産申立ての検討を行う際には、当該申立手続を弁護士に依頼するために要する費用のほか、上記予納金を確保できるかが重要な問題となります。

4 その他
法人の負っている債務について、当該法人の代表者等が連帯保証人となっているケースがしばしば見受けられます。
この場合、法人が自己破産申立てを行うと、債権者は上記代表者等に連帯保証債務の履行を求めてくることとなりますので、上記代表者等においても、自己破産申立ての要否につき検討を行うことが必要となります。