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死亡慰謝料について、高齢者だと、以前はやや低めの認定をする判決があり(→こちら)、一方で、若年者には、赤い本の基準を超える高額の認定をする判決があることを紹介しました(→こちら)。
その後、調べ物をしているついでに、該当する部分をパラパラとめくっていると、このあたりの裁判官の考え方が分かったので、その紹介です。ちなみに、読んでいたのは、やや古くなっていますが、東京三弁護士会交通事故処理委員会編『新しい交通賠償論の胎動』(2002年)です。
赤い本の死亡慰謝料「その他」の額は、2001年まで2000万円だったのが、2002年から2000万円~2200万円になっています。
どうしてそうなったのかというと、当時、東京三弁護士会交通事故処理委員会から東京地方裁判所の専門部(民事27部)に対して、2000万円の旧基準を2200万円に増額することについて意見を求めたときに、裁判所が、2000万円~2200万円の幅を設けてもらいたいという意見を述べたからというのです。
その理由として、多くの裁判官が、高齢者について2000万円を下回る慰謝料を認定し、他方で、子どもには2000万円を上回る慰謝料を認めていたという実情が紹介されています。
更に遡ると、1975年当時、東京地方裁判所の専門部(民事27部)は、「50歳以上の者については減額することがある」という基準を公表していたというのです(そのころは、50歳が境目だったというのが驚きです。)。
しかし、2014年の同じ東京地方裁判所の専門部(民事27部)の裁判官の講演では、「『人生を享受している度合い』によって慰謝料に差を付けることに合理性があるかは疑問もあるところです。」、「近時、東京地裁民事27部(民事交通部)で、高齢者であるという理由だけで、2000万円を下回る慰謝料額を認定した判決例は見受けられないようです。」とまとめられています(→こちら)。
高齢社会が進行する中で、高齢であるからといって、人としての価値や生命の本質に変わりはないという意識が広まり、裁判官の考え方も変わってきているようです。
高齢だけを理由とする損保会社の死亡慰謝料の減額の主張には、自信を持って反論すべきです。