交通事故にあったら
▼交通事故にあってしまいました。どうすればいいでしょう?
まず、警察に110番通報しましょう。加害者に報告の義務があるのですが、誰も警察に届け出ていないと、「事故証明書」を発行してもらえず、後で保険の手続で苦労することがあります。
警察が来る間に、加害者の確認をしましょう。車のナンバーを控え、加害者の名前などを聞きましょう。運転免許証を見せてもらい、住所、名前、生年月日を控えるのが確実ですし、名刺をもらえば、勤務先も確認できます。自宅や携帯の電話番号を聞いておくことも必要です。さらに、車検証を見せてもらえば、車の所有者や使用者が分かります。
また、加害者の車の自賠責保険、任意保険の保険会社を聞いておきましょう。
その上で、自分が入っている任意保険の保険会社にも連絡しておきましょう。自分の保険から保険金が出ることもありますし、賠償の話しがこじれたときには、自分の保険に弁護士特約がついていれば、弁護士費用が保険から出ることになります。
事故車が交通の邪魔になっていて、警察が来る前に、事故車を動かさなければならないこともありますが、その場合は、事故車の位置を携帯でもいいのでカメラで撮っておきましょう。
▼警察の人が来て、「現場検証」が始まりました。気をつけることがありますか?
よく「現場検証」と言われますが、正しくは「実況見分」です。
気をつけることは、正確に事故の状況を記録してもらうことです。記録された内容によっては、過失の割合で不利になったり、また、衝突の衝撃が小さいように誤解されたりということがよくあります。加害者の言うことと食い違っていても、あなたが正しいと思う事故の状況を記録してもらってください。
ただ、そうはいっても、咄嗟のことですから、はっきり覚えていないことが多いかもしれません。少しでも客観的な証拠を残すように、事故後の状況を変えないようにしてください。車は、通行の邪魔になっても、警察が来るまでは動かさないのが原則です。どうしても動かさなければならないときは、携帯のカメラでもいいので、動かす前の位置を写真に撮っておいてください。
▼怪我をしたけれども、軽傷です。病院に行かなくてもいいですか?
▼加害者から、被害はきちんと弁償するから、警察に届けないでほしいと言われました。届けなくてもいいのですか?
▼警察の人が来たときには、大した怪我でもないと思ったので、物損事故としてもらったのですが、その夜から痛みがひどくなりました。そのままにしていてもいいのでしょうか?
請求・示談
▼加害者側は保険会社が窓口になり、素人の私では太刀打ちできません。
加害者が任意保険(自動車保険)に入っていると、その保険には示談代行のサービスがついているので、保険会社の担当者が対応することになります。また、場合によっては、保険会社の顧問の弁護士が対応してくる場合もあります。
そのような場合、賠償の実務・手続や法律を知らない被害者は、確かに不安でしょうし、不利な結論で納得させられている例もあるように思います。
やはり、専門家のサポートを受けることが安心ですし、有利だと思います。その際、いろんな相談窓口がありますが、やはり、もっとも法律問題に詳しいのは弁護士です。加えて、交通事故は医療の知識が必要になることも多いので、医療に詳しく、医師との連携が取れる弁護士がより望ましいと思います。(ちなみに、原総合法律事務所の弁護士は、医療問題研究会に参加しており、医療事故にも被害者側で積極的に取り組んでいます。また、保険会社の顧問にもなっておらず、交通事故にも被害者側で取り組んでいます。)
▼加害者は、保険会社に任せてあるからの一点張りで、話合いに応じようとしないばかりか、見舞いにも謝罪にも来ません。そんなものなのですか?
▼加害者に頼まれ、警察に届けをしなかったのですが、思ったより怪我が重く、加害者から十分な賠償をしてもらえません。加害者の保険会社に請求はできないのですか?
保険の請求をするときには、「事故証明書」を提出しなければなりませんが、この事故証明書は、警察が事故の扱いをしていなければ発行してもらえません。まず、警察に、今からでも事故と扱ってもらえないか、相談してみましょう。
ただ、実際には、事故から日数が経っていると、当時の状況を再現することができず、事故と扱ってもらえないこともあると思います。その場合は、保険会社に、事故証明書に代わる「事故証明入手不能理由書」を提出します。保険会社が調査して、実際に事故が起こったことが確認されれば、保険の対象となることがあります。
▼加害者側から、私の方で損害を証明するように言われました。どうして被害を受けた者がそんな面倒なことをしなければならないのですか?
お気持ちは分かりますが、どんな損害があったのかは、被害者でなければ分かりません。損害の証明は被害者がしなければならず、被害者が損害を証明できなければ、賠償はしてもらえません。
そこで、損害の証拠は、ご自身で集めておかなければなりません。
もっとも、治療費は、後日、病院で所定の書式(診療報酬明細書)により証明してもらうことができます。
交通費は、バスや電車など公共交通機関を利用した分については、いちいち領収書は必要ありません。しかし、タクシーを利用した場合は、領収書が必要です(もっとも、タクシーの利用は、その必要性が問題になることがあります。)。
休業損害は、勤務先で、事故前の給与と休業期間の証明をしてもらうことが必要です。これにも、決まった書式があります。なお、自営業者の場合や主婦などの場合は、特殊な問題があります。
逸失利益や後遺障害慰謝料は、後遺障害が認められなければなりませんが、そのためには、医師に所定の書式の後遺障害診断書を書いてもらわなければなりません。ただ、後遺障害と認められるか、また何級の後遺障害になるかは、争いになることが多く、診療録(カルテ)を検討したり、専門医に意見書を書いてもらったりといったことが必要になることがあります。
▼加害者側と交渉しているのですが、平行線で示談が進みません。自賠責分だけ先に請求することができると聞いたのですが、本当ですか?
▼示談とは、何ですか?
示談とは、被害者と加害者の間でなされる損害賠償に関する合意です(法律上は「和解契約」といいます。)。
実際には、交通事故の場合、加害者側が任意保険に入っていると、保険会社が示談を代行しますので、示談の多くは、被害者と加害者側の保険会社の間で行われます。
示談は、法的には口約束でも成立しますが、後日のトラブルを避けるために、「示談書」、「和解(契約)書」、「合意書」、「免責証書」といったタイトルの書面で残しておくのが通常です。
通常は、加害者側の保険会社担当者から、最終的な支払額の提案がありますが、その額が適正か(低すぎないか、あるいは、落としている損害の項目がないかなど)、判断は難しいと思います。弁護士に相談されることをお勧めします。
また、提示された内容に納得できても、その書き方によっては、後日にトラブルを残すこともありますから、具体的な書面の案が示された段階でも、弁護士に確認してもらうことをお勧めします。
▼まだむち打ちで通院しているのですが、保険会社から、もう通院の必要はないだろう、治療を打ち切って示談しようとの連絡がありました。示談しなければいけないのですか?
確かに、加害者側の保険会社からは、通院期間が長くなると(例えば、6か月を超えたりすると)、示談を迫られることがあります。しかし、むち打ち損傷の中には、症状が長引き、治療に長期間を要する場合もあります(例えば、神経根症状、バレ・リュー症状がある場合。また、最近、脳性髄液減少症(低髄液圧症候群)も注目されましたし、中心性頚髄損傷も問題になりつつあります。)。治療の必要性について、十分、医師と相談されてください。
しかし、医師が治療の必要があると見ても、保険会社から、もう治療費は出せないと言われることがあります。その場合の対応は、ケースバイケースで、いろいろな事情を考えて方針を決めなければなりません。弁護士に相談されることを強くお勧めします。
▼交通事故に遭い、軽いむち打ちになりましたが、すぐによくなりそうだったので、示談をしました。ところが、その後、症状が良くならないばかりか、悪くなったような気もします。保険会社に言ったところ、示談は済んでいるから支払えないと言われました。いったん示談すると、もう請求することはできないのですか?
事案にもよりますが、示談の際に予想できなかった症状が出てきた場合で、その症状と事故との因果関係(事故に遭ったのが原因で、今の症状が出ていること)があれば、損害賠償を請求することは可能です。
しかし、示談後の請求に、保険会社がすぐに応じてくれるとは限りません。示談には慎重であるべきです。示談の際に、予想できないような後遺障害が出てきた場合には、請求ができる旨を書いておくこともあります(もっとも、その旨を書いていなくても、示談の際に予想できなかった損害の請求は可能です。)。
その上で、今の症状が事故に遭ったのが原因であることを、医師に証明してもらうことが必要になります。
▼加害者側の保険会社から示談案が示されましたが、納得できません。どうすればいいのでしょうか?
損害賠償の額については、これまでの数多くの裁判の結果をふまえた一応の目安があります。
しかし、加害者側の保険会社から示される示談案は、これよりも低いのが通常です。確かに、裁判する手間や時間、費用などを考えれば、裁判で認められるであろう額より低いのもやむを得ないとはいえます。とはいっても、あまりに低すぎる額が示談案として示されることがあるのも事実です。
そもそも、損賠賠償の基準は、そのあてはめが簡単ではありませんし、具体的な事情によっては、その基準をそのままあてはめるのはおかしいのではないかと思われるケースもあります。
また、保険会社は、経験も知識もありますから、個人では交渉が難航することが予想されます。
そこで、加害者側の保険会社から示された示談案に納得できない場合は、専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。保険会社が示す額は、裁判の目安(基準)よりも低いので、弁護士の助言を受け交渉することで、有利に交渉を進めることができます。さらに、交渉を弁護士に委任すれば、高額の示談案を引き出せることも多いですし、裁判すれば、より高額の賠償が認められることが多いといえます。
▼自賠責保険と任意保険の違いを教えてもらえますか?
自賠責保険は、法律で加入が強制されているものです。車を買うときや車検の機会に、この自賠責保険の保険料を支払わないと、その手続ができなくなっています。
その保険金の上限は、次のとおりで、十分とはいえませんし、物損を含みません。
死亡事故の場合
死亡による損害 3000万円
死亡するまでの傷害による損害 120万円
傷害事故の場合
傷害による損害 120万円
後遺障害による損害 介護を要するものは3000万円から4000万円、その他の後遺障害は75万円から3000万円
この自賠責保険の保険金を超える損害を賠償する保険が任意保険(自動車保険)です。
各保険会社が様々な保険を売り出していますが、主なものとして、次のような保険をセットにしています。相手(被害者)に対する賠償として支払われるものが対人賠償と対物賠償で、それ以外のものは、自身に対する支払を内容としています。
- 対人賠償保険
- 自賠責保険の上乗せ保険として、自賠責保険の上限以上の賠償をするものです。
- 無保険車傷害保険
- 加害者側が任意保険(対人賠償)に入っていなかったりする場合に、加害者に代わって保険金を支払ってもらえるものです。
- 自損事故保険
- 自損事故で死傷した場合など、自賠責保険から支払を受けられない場合に、保険金を支払ってもらえるものです。
- 搭乗者傷害保険
- 補償の対象となる自動車に搭乗中の人が死傷した場合に、保険金が支払われます。
- 人身傷害保険
- 人身事故にあった場合、過失割合に関係なく保険金額の範囲内で保険金が支払われるものです。
- 対物賠償保険
- 物損について、被害者への賠償をするものです。
- 車両保険
- 契約車両の損害に対する補償をするものです。
加害者が任意保険に入っている場合には、自賠責保険分も含め、任意保険会社に損害賠償請求をすることができます(一括払い)。また、任意保険会社は、加害者側の示談を代行します。
損害
▼どんな損害の賠償を請求できるのですか?
事故により発生する損害は様々なものがあります。そのうち、賠償の範囲に入るのは、事故と「相当因果関係」がある損害とされています。相当因果関係といっても、よく分からないと思いますが、治療などに必要であったか、妥当・適正なものであったかが問題となります。ケースバイケースの法的な判断になりますので、弁護士の相談を受けることをお勧めします。
主な損害の項目だけを上げれば、次のようなものがあります。
- 治療関係費(治療費、入院雑費、付添費、通院交通費、診断書等文書料等)
- 休業損害
- 傷害(入通院)慰謝料
- 死亡慰謝料
- 逸失利益
- 後遺症慰謝料
- 物損(修理費等)
死亡事故、傷害事故、後遺障害を残した事故、物損のそれぞれの場合について、それぞれの項目をご覧ください。
▼死亡事故の場合は、どんな損害の賠償を請求できるのですか?
亡くなられるまでの間、治療費がかかっていれば、その分を請求できるのは当然です。また、葬儀費用の請求もできます。
これらと比べ、額が大きくなるのは、逸失利益と死亡慰謝料です。逸失利益とは、その人が事故にあわず生きていれば、生涯を通して得ていたであろう利益のことをいいます。通常は、平均収入を基礎に、働けるであろうと考えられる年齢までに得るはずと考えられる収入から、その人が生きていくために必要だったと考えられる生活費を差し引いて計算します。ただし、注意しなければならないのは、これから数十年かけて得る利益について、一括して前払いを受けるので、利息分を差し引かれる点です(中間利息控除といいます。)。その計算は、簡単とはいえないので、弁護士に相談することをお勧めします。
死亡慰謝料は、どのような立場の人か(一家の支柱か等)によって一応の基準があります。しかし、その基準も、いろいろな事情で修正されることがありますので、やはり、弁護士に相談することをお勧めします。なお、死亡事故の場合、亡くなられた本人のほかに、近親者(内縁関係にある者や胎児を含みます。)の慰謝料を請求する場合もありますが、慰謝料の合計額は変わらないようです。
なお、胎児というのは、被害者が事故で亡くなったときにはまだ生まれていなかったが、後に生きて生まれてくれば、その胎児も慰謝料を請求できるということです。
▼傷害事故の場合は、どんな損害の賠償を請求できるのですか?
主な損害として、まず、治療にかかった費用の請求ができます。病院や薬局に支払った代金、診断書を書いてもらうのにかかった文書料、入院した場合は入院雑費(1日あたりの定額で支払われます。)、通院交通費などです。
次に、休業による収入減に対して、休業損害が認められます。具体的には、サラリーマンの場合は、一般に、事故前3か月間の平均給与を基礎に、休業日数に応じた賠償が認められます。この際、注意すべきは、有給を使った場合も、そのときに有給を使わなければ後に有休を使えたわけですから、休業日数に含まれる点です。これに対し、自営業の場合も、休業による収入減があれば休業損害が認められるのですが、その証明はかなり難しいことが多いようです。弁護士に相談することをお勧めします。
また、傷害慰謝料も認められますが、傷害による苦痛を計ることは難しいので、入通院期間(日数)により基準にあてはめて算定します。なお、むち打ち損傷とそれ以外では基準が異なっています。
さらに、後遺障害が残った場合は、次のQ&Aを参照してください。
▼後遺障害が残った場合、どんな損害の賠償を請求できるのですか?
逸失利益と慰謝料が中心ですが、特に重い後遺障害の場合は、付添看護費等も認められることがあります。
逸失利益とは、死亡事故の場合にも認められますが、後遺障害が残った場合の逸失利益は、後遺障害がなければ得られたであろう生涯の収入との差額をいいます。平均収入を基礎に、後遺障害で収入が減少する割合(労働能力喪失率といいます。)と働けるであろう期間(労働能力喪失期間といいます。)をかけて求めますが、ここでも、死亡事故の場合の逸失利益と同様、一括して前払いを受けるので、利息分を差し引かれます(中間利息控除といいます。)。
後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級ごとに(もっとも重い1級からもっとも軽い14級まで)基準があります。
▼鍼灸による施術費も賠償してもらえますか?
▼通院のためにタクシーを使った場合、タクシー代は賠償してもらえますか?
バスや電車など、公共交通機関を利用できない事情があれば、タクシー代の賠償も認められます。例えば、事故当日、救急車を呼ばなかった場合に、事故現場から病院へ向かうタクシー代は認められるのが通常ですし、病院までの公共交通機関が日に数本しかないような場合は、タクシーを使うのもやむを得ないとして賠償が認められるでしょう。そうでない日々の通院は、例えば、松葉杖で乗り降りに支障があるといった特別の事情が必要です。
ただし、その場合でも、領収書が必要ですので、必ず領収書をもらうようにしてください。また、あらかじめ、保険会社の担当者にタクシーを使うことの了解を得ておいた方が無難です。
▼休業損害とは何ですか?
事故の怪我のために入通院等で仕事ができず、収入を得ることができなかった場合に、その収入の減少分の賠償を求めることができます。
自賠責保険では、定額で1日あたり5700円とされています。
任意保険や裁判では、実収入をもとに計算されます。具体的には、サラリーマンの場合は、一般に、事故前3か月間の平均給与を日数で割り、日額を出して、休業日数をかけます。この際、注意すべきは、有給を使った場合も、そのときに有給を使わなければ後に有休を使えたわけですから、休業日数に含まれる点です。これに対し、自営業の場合も、休業による収入減があれば休業損害が認められるのですが、その証明はかなり難しいことが多いようです。弁護士に相談することをお勧めします。
▼主婦で、外で働いているわけではないのですが、入院してしまい、夫と夫の実家に家事を頼むほかありませんでした。このような場合でも休業損害は認められますか?
▼逸失利益とは何ですか?
死亡事故や後遺障害が残ってしまった場合に、死亡事故や後遺障害がなかったらもらえたであろう収入のことです。
死亡事故の場合は、事故前の年収額又は平均収入を基礎に、働けるであろうと考えられる年齢までに得るはずと考えられる収入から、その人が生きていくために必要だったと考えられる生活費を差し引いて計算します。ただし、注意しなければならないのは、これから数十年かけて得る利益について、一括して前払いを受けるので、利息分を差し引かれる点です(中間利息控除といいます。)。
後遺障害が残った場合は、平均収入を基礎に、後遺障害で収入が減少する割合(労働能力喪失率といいます。)と働けるであろう期間(労働能力喪失期間といいます。)をかけて求めますが、ここでも、死亡事故の場合の逸失利益と同様、一括して前払いを受けるので、利息分を差し引かれます(中間利息控除といいます。)。労働能力喪失率は、後遺障害の等級により一応決まっているのですが、障害の具体的な内容や被害者の職業などによって変わってくるので、弁護士に相談されることをお勧めします。
なお、働けるであろう年齢は、67歳までとされていますが、高齢の方の場合、平均余命の2分の1が67歳までよりも長ければ、平均余命の2分の1の期間働けると考えます。
▼慰謝料とは何ですか?
慰謝料とは、交通事故によって受けた肉体的・精神的苦痛に対するお詫びの気持ちを、あえて金銭に換算したものです。死亡事故の場合の死亡慰謝料、傷害事故の場合の入通院期間に応じた傷害(入通院)慰謝料、傷害後の後遺障害に対する後遺障害慰謝料の3種類があります。
死亡慰謝料は、亡くなられた方の立場(一家の支柱であったかなど)によって基準があります。
傷害慰謝料は、入通院の期間(実日数も考慮)によって基準がありますが、むち打ち損傷とそれ以外では適用する基準が違います。
後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級によって決まります。
なお、物損については、慰謝料を認めないのが原則です(例えば、亡父が車好きで、その遺品の車を大事に使ってきたからといって、その車を壊された慰謝料が認められるわけではありません。)。
▼入院することになったのですが、大部屋では気が休まりません。個室や特別室は使えますか?
▼たまたま事故にあったときは勤務先を整理解雇され無職でした。休業損害は認められないのですか?
▼買ったばかりの車で事故にあいました。買い換えたいのですが、新車の代金は賠償してもらえないのですか?
事故によって車の修理が必要になった場合は、適正な修理費の賠償しか認められません。もっとも、修理費が高額で、同じ車種、年式、使用状況の中古車を買うのに必要な額を超える修理費となるときは、その買換えの費用が賠償額となります。
要するに、新車を買い換える費用全額は賠償してもらえません。
ただ、買って間もなくの車であれば、事故にあったことにより事故車として価値が落ちた分を、評価損として賠償してもらえることがあります。
なお、修理や買い換えに通常必要な期間のレンタカー代は、別途、損害と認められます。
▼加害者側との交渉を弁護士に依頼したいと考えていますが、弁護士費用も相手に請求できるのでしょうか?
▼高齢で年金収入しかない父が死亡事故にあいました。年金暮らしでも逸失利益を請求できますか?
症状固定・後遺障害
▼医師から、もう「症状固定」だから後遺障害診断書を書くが、以後の治療費は自分で払ってくれと言われました。加害者側に請求できないのですか?
これ以上の治療をしても、症状が良くなる見込みがなくなることを「症状固定」といいます。その「固定」した症状を「後遺症」とか「後遺障害」といいます。
症状固定の前後で賠償される損害が違うとされているので注意が必要です。
例えば、治療費についていえば、治療は症状を良くするためのもので、症状固定により、以後、症状が良くならないのであれば、それは症状が悪くならないようにするための「リハビリ」であって、損害賠償の対象となる「治療」ではないというのが保険会社の原則的な考え方です。
もっとも、交渉や裁判においては、症状固定後の医療費についても賠償に含むような柔軟な解決が得られることもないではありません。ここも、ケースバイケースですから、弁護士の相談を受けてもらいたいところです。
▼怪我も随分良くなったので、職場復帰しましたが、出勤日数や勤務時間を制限してもらっています。その減給分を休業損害として請求したところ、もう「症状固定」しているから、休業損害の賠償はできないといわれました。本当なのですか?
これも、症状固定の前後で賠償される損害が違ってくる例です。
症状固定後は、後遺障害の程度に応じた逸失利益の請求しかできないとされるの通常です。
これに対し、症状固定までは、収入の減少分をそのまま休業損害として請求できますから、ここでも症状固定がいつかが重要な問題になります。
▼後遺障害の等級認定はどこで行われているのですか?
▼後遺障害認定の申請手続はどのように行ったらよいですか?
まず、最後に治療を受けていた病院で、自賠責で決められた用紙を使い後遺障害診断書を書いてもらうことが必要です。このとき、自分の症状が正確に診断書に書かれているか確認してください。特に、事故直後から一貫して継続した症状があったことが書かれているかがポイントです。この点が書かれていなければ、医師に相談されてみてください。
その上で、被害者としては、
(1) 加害者が契約している任意保険会社に後遺障害診断書を提出し、その保険会社から後遺障害の認定を調査事務所に申請してもらう方法(一括請求といいます。)と、
(2) 被害者が、後遺障害診断書などの必要書類を揃えて、加害者が契約している自賠責保険の保険会社宛てに直接提出して申請する方法(被害者請求といいます。)
があります。
▼後遺障害の認定結果が非該当(後遺障害にはあたらない)とされました。納得いかないのですがどうすればよいでしょうか?
異議申立てをすることができます。
ただし、前回と同じ資料では、同じ結果となってしまう可能性が高いでしょう。新たな検査結果や医師の意見書等の新しい後遺障害を証明できる書類といっしょに提出すべきです。
また、診療録の開示を受け、そこから有利な部分を見付け、弁護士の意見書で指摘することも有効です。医療に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします(原総合法律事務所では、医療事故にも積極的に取り組んでおり、診療録を事務所内で検討することができます。)。
▼後遺障害の等級認定に不服がある場合でも、異議申立てをすることができますか?
▼事故で顔に3cmの傷痕が残り、精神的にこもりがちになってしまい、仕事を辞めてしまいました。将来働けなくなったことの賠償まではできないと言われていますが、本当ですか?
このように傷跡が残ることを外貌醜状といいます。
治療している間の治療費や仕事を休んだ休業損害、その入通院の期間に応じた慰謝料の賠償を受けられることは当然です。
問題は、傷痕が残ったことについて、後遺障害として、将来働けなくなったことの賠償(逸失利益といいます。)や後遺障害の慰謝料の賠償を受けられるかです。
外貌醜状については、傷痕の場所や大きさによって後遺障害の重さ=級が変わります。かつては、男性と女性で後遺障害としての扱いが異なり、女性はより重い後遺障害、男性はより軽い後遺障害とされていましたが、憲法の平等原則に反するとして、昨年から男女で扱いの違いはありません。
顔面に3cmの傷痕だと、12級にあたります。
そこで、まず、12級の後遺障害慰謝料として、裁判の基準によれば、290万円が認められるべきです。
難しいのが、将来働けなくなる損害、逸失利益です。外貌醜状は、身体は元気なわけですから、当然に収入が減るとは考えられていません。ただ、人前で接客する仕事であれば、仕事に影響が出ることも考えられるので、逸失利益が認められることもあります。微妙なので、弁護士に相談してみてください。
過失相殺
▼交差点で出会い頭の車同士の事故に遭いました。相手は自分の過失割合は2割で自分が被害者だと言い張ります。過失割合ってそもそも何ですか?
過失割合とは、事故に関係した者の間でのそれぞれの落ち度(過失)の度合いのことをいいます。
例えば、相手の過失割合が2割であなたの過失割合が8割の場合には、事故の責任は相手方に2割しかなく、あなたの責任が8割もあるということですから、確かに被害者は相手の方だということにもなりかねません。その場合、自分の損害については、相手方から2割しか賠償してもらえず、逆に、相手の損害の8割をこちらが賠償しなければなりません。
過失割合によって、賠償を受けられる額が大きく変わってきますので、過失割合がどのように決まるのかは、重要な問題です。
▼過失割合は、どうやって決めるのですか?
過失割合には一応の目安があります(参考:判例タイムズ社「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」)。多くの裁判所の判断をまとめて、ケース毎に基準を作ったものです。
例えば、交差点での出会い頭の事故の場合、まず基本的にどれくらいの過失になるのかが数字で示されています。その基本割合に事故時の状況に従った修正要素が加わり、最終的な過失割合が決められます。
具体的には、信号機のない同じくらいの道幅の交差点で、あなたが直進で交差点に入ったところに、右から直進してきた車がぶつかってきたとします。同じくらいのスピードであれば、基本の過失割合は、左方優先であることを考え、あなたが40に対し、右方の車が60とされています。しかし、見通しのきく交差点であれば、右方の車はあなたの車を直接見ることができますから、右方の車に10の過失がプラスされ、あなたが30,右方の車が70の過失割合になります。
多くの場合、保険会社は加害者に有利な過失割合を主張してきます。それに対抗するためには、上記の基準にしたがった反論が必要ですが、その基準へのあてはめは簡単ではないので、やはり、弁護士に相談されることをお勧めします。
▼友人とお酒を飲みにいった帰りに友人が事故を起しました。保険会社は、私にも過失があるから慰謝料は減額しますと言ってます。減額されるのは仕方ないのですか?
▼過失があった場合、必ず減額されてしまうのですか?
まず、自賠責では、被害者に7割以上の過失がなければ、減額されません。また、被害者に7割以上の過失があっても、被害者に有利な減額割合になっています。
これに対し、任意保険や裁判では、過失割合に従って減額されてしまいます。
その結果、被害者に重大な落ち度が認められるような事案では、自賠責の方が賠償額が大きくなることがあります。
▼過失によって減額された場合に、その分を他の保険等で填補してもらえませんか。
▼過失割合について、加害者側の言う事故状況は随分事実と違います。どうやって反論すればいいのですか?
過失割合の基準へのあてはめをする上で、まず重要なのは、どのような事故状況だったのかということです。
その点で、もっとも重視されるのが、警察が作った実況見分調書です。事故直後に、専門的な経験もある警察官が、現場を計測し、写真を撮り、当事者の指示説明を聞いて作成したものですから、信用されるのは当然です。
この実況見分調書の図面にしたがって、過失割合の基準をあてはめ、相手方に反論していくこととなります。
ところが、実際には、自分の記憶、認識とは違う図面が作られていると言われる方が多いのです。実況見分時、自分の記憶どおりに、たとえ相手方の言い分と違っても、正確に記録に残してもらうことが必要です。
自分の記憶、認識とは違う図面が作られている場合、車の損傷の場所や程度、事故直後の現場の写真など客観的な証拠と実況見分調書が食い違うことを指摘していかなければなりませんが、かなり難しい作業となります。
その上で、過失割合の基準の類型のどれにあてはまり、どのように修正されるかを主張することになります。
▼過失相殺の基準へのあてはめをするために必要な実況見分調書ですが、どのようにすれば手に入るのですか?
既に加害者が業務上過失致死傷罪など有罪が確定していれば、その記録のコピーを検察庁でもらうことができます。その中に、実況見分調書も入っています。
一方、不起訴になった場合は、その記録は非公開が原則なのですが、実況見分調書等は、過失割合など損害賠償に不可欠な資料ですので、例外的にコピーをもらうことができます。ただ、その方法は、弁護士会を通じた照会手続などによることになっており難しいので、弁護士に相談されることをお勧めします。
▼物損について示談したときには、100:0でこちら側には過失はないことになっていたのに、人身の賠償では、90:10と言ってきました。そんなことが許されるのですか?
人身の賠償に関する交渉で、物損の示談のときの過失割合と違う割合を主張することができないわけではありません。
要は、その事故の状況で、適切な過失割合がどれくらいかということです。
実際、物損のときは、賠償額が大きくならないので、過失割合にこだわらず和解した保険会社が、人身の示談のときには、額が大きいことがあってだと思いますが、より加害者側に有利な過失割合を主張するような場面はときどき目にします。
各種保険との関係
▼交通事故にあい、入院した病院で「健康保険は使えません。」と言われました。本当ですか?
交通事故でも健康保険は使用できます。病院側がそのようなことをいうのは、健康保険を使わず治療した場合(自由診療といいます。)の方が、保険点数というものが高くなり、病院側の利益が多くなるからです。ただし、まれに、健康保険の適用されない治療もありますので病院側に確認した方がよいです。健康保険を利用する際は、社会保険事務所に第三者行為災害届けを行うことを忘れないようにしてください。
また、被害者側にも過失がある場合には、治療費について、自分の過失割合相当分の負担が生じます。その場合は、自分の負担が少なくなるように、健康保険を利用した方が有利になるといえます。
▼通勤途中の事故だったので、労災の申請をして、労災で治療を受け、また、休業補償も受けています。その上、加害者に損害賠償請求できるのですか?
▼夫が交通事故で亡くなり、生命保険金を受け取りました。保険金を受け取ると、加害者に対する損害賠償の額から差し引かれるのですか?
▼営業で外回りをしているときに交通事故にあいました。相手は自賠責保険しか入っていないようで、労災保険を使いたいのですが、会社は、交通事故だから相手に請求するようにと言います。労災保険は使えないのですか?
通勤中はもちろん、営業のために外出しているときの事故では、労災保険の請求もできます。
特に、相手が自賠責保険しか加入していないような場合は、労災保険の請求を先に行った方が有利な場合があります。例えば、自賠責保険では、傷害に対する補償が120万円しかなく、治療費などに自賠責の枠を使い切ってしまうと、自賠責保険から慰謝料の支払を受けられません。そこで、労災保険で先に治療をみてもらい、自賠責保険から慰謝料をみてもらう方が有利ということになります。
また、自分の過失が大きかったり、過失の割合で相手方(損保会社)ともめているような場合も、労災保険の請求を先にする意味があります。
もちろん、労災保険と加害者からの損害賠償の二重取りはできませんが、労災保険により被害者側が損害をかぶることは避けることができます。
その他
▼小学校1年生(7歳)の子どもの飛び出しが原因で、対向車と衝突事故を起しました。子どもの親に損害賠償を請求することはできるのでしょうか?
▼交通事故の被害を受けましたが、加害者が任意保険に入っていませんでした。加害者の自賠責保険だけでは、損害の填補が十分ではないのですが、加害者に請求することはできますか?
もちろん、可能です。ただ、加害者に資力がない場合、回収の見込みがありません。
ご自身の保険で、こういった場合の補填となる人身傷害保険等に加入していないかをチェックしてみてください。
なお、直接の加害者(運転者)でなくても、使用者や保有者と呼ばれる人に対し、賠償を求めることができる場合がありますので、弁護士に相談しみることをお勧めします。
▼損害賠償請求はいつまでできるのですか?
▼弁護士に依頼したり、訴訟をする場合等の費用が気になります。費用はどれくらいかかるのでしょうか?
弁護士費用や裁判費用等は、請求額や事件の難易などによって変わってきます。詳しくは、こちらをご覧ください。
ご自身が契約している保険に弁護士費用担保特約(弁護士特約)がついている場合は、保険会社に弁護士費用や裁判費用を支払ってもらえますので、保険会社に問い合わせてみてください。
原総合法律事務所交通事故相談センターでの相談は、同じ事故について、3回まで無料になっております。ご心配な点がございましたら、相談にいらっしゃってください。
▼裁判をするとして、費用以外にも、裁判にかかる期間や何回くらい裁判所に行かなければならないのかも気になるのですが?
まず、裁判の期間ですが、平均的には、一審(多くの場合地方裁判所)で判決までに8~10か月でしょうか。ただし、医学的な争いがある事件はより長くなることが多く、1~2年かかってしまうこともあります。
もっとも、審理の途中で、裁判所から和解を勧められ、和解で解決することもありますが、その場合はやや早く終わります。
裁判所に出向く必要は、弁護士に委任している場合は、多くはありません。裁判所でのやりとりは、ほとんど弁護士が行います。ただ、尋問には出頭してもらわなければなりませんし、裁判所から和解を勧められ、その最終判断が必要な場合には、出頭する方がよいでしょう。ほとんどの場合、1回から多くても2~3回の出頭ですみます。
▼交通事故は、弁護士だけでなく、行政の窓口や行政書士、司法書士などでも相談を受けてくれるようですが、どこが違うのですか?
損害賠償は法律問題で、法律を専門とするのは弁護士です。しかも、交通事故の損害賠償には、実は簡単とはいえなかったり、特殊な法的知識が必要なものもあります。交通事故の損害賠償に積極的に取り組んでいる弁護士に相談することをお勧めします。
ちなみに、行政書士は示談交渉を行うことを許されていませんし、司法書士も特別の資格のある司法書士(認定司法書士といいます。)が140万円までの事件を示談交渉できるだけです。
加えて、交通事故では、医学的な知識が問題になるものも多く、医療過誤も扱う弁護士に相談される方が安心です。
なお、行政の窓口の相談は無料ですが、原総合法律事務所でも相談料無料の相談窓口を交通事故案内ダイヤルとして運営しています。
また、事件として依頼を受けた場合も、その費用は行政書士や司法書士と変わらないことが多いようです。
▼被害者の弁護士費用をカバーする弁護士費用特約は、家族の事故にも使えると聞きましたが?
一般的な弁護士費用特約は、同居の親族や別居の未婚の子どもまでカバーしています。
被害にあわれた方が自動車保険に入っていなくても、家族の中に自動車に乗る人がいる場合には、その家族の自動車保険に弁護士費用特約がついていないか確かめることをお勧めします。
弁護士費用特約が使えるのに使っていない人も多いようです。
▼弁護士費用特約は、歩行中の事故にも使えるのですか?
▼弁護士費用特約を使うと、翌年の保険料が上がるのですか?
▼弁護士費用特約は、保険会社から紹介された弁護士にしか使えないのですか?