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中心性頚髄損傷という病態
一般に,頚髄不全損傷のうち,受傷時当初から,又はその回復過程において,上肢の運動障害が下肢のそれに比べてより著明なものを中心性頚髄損傷という。
その受傷のメカニズムは,脊柱管の狭小化がもともと存在していたところに,過伸展といった外力が加わり,頚髄が損傷を受けると説明されている。脊髄内の外側が下肢,内側が上肢を支配するとの仮説の下,脊髄の「中心」が損傷を受けるので,上肢の障害が不釣り合いに大きくなると説明されることがあるが,脊髄内にそのような層状構造が存在することの解剖組織学的な実証は得られていないとの説もある。
それは,交通外傷でもあり得る受傷のメカニズムである。
その診断は,神経学的な異常所見の存在とそれに整合する画像所見をもって行われる。MRIでの髄内輝度変化や軟部組織損傷が確認されることが多いが,必ずしもMRI所見が確認されるともいえない(この点で,MRI所見がなければ中心性頚髄損傷を否定する賠償実務は正当ではない。)。
多くは,時間の経過とともに,神経症状が改善して行くが,予後の悪い例もある。保存療法で麻痺が悪化する場合や高度の脊髄圧迫がある場合には,手術により除圧を行うことで改善する例があるとされる。