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弁護士原幸生による記事です。
オンラインのDJ配信に関する最後の記事となりますが、今回は著作隣接権(レコード会社の権利は原盤権と言ったりします)の説明です。
結論から述べると、著作隣接権の権利処理を行おうとすると、なかなか難しい問題に直面します。
〇著作権
公衆送信権 複製権 翻案権
〇著作者人格権
同一性保持権
〇著作隣接権
録音権(実演家) 送信可能化権(実演家) 同一性保持権(実演家)
複製権(レコード会社) 送信可能化権(レコード会社)
いずれも実演家の有する著作隣接権ですが、実務上は、レコード会社に譲渡されていることが通常ですので、以下の7及び8で検討すれば足り、個別の検討は不要と思われます。
実演家の有する著作隣接権ですが、著作者人格権と比較すると保護の程度は薄く、DJ配信の場面では、特に問題とならないでしょう。
第1回目の記事の2と同様の問題が生じます。
著作隣接権の権利処理をする際の問題点として、著作権の場合はJASRACが一括して窓口となり権利処理をすることとなりますが、著作隣接権の場合は、JASRACのような権利を集中的に管理する事業者がいません。
そうすると、著作隣接権の複製権について権利処理を行おうとすると、個別に著作隣接権者(各レコード会社)との間で、協議・交渉し権利処理をする必要がありますが、対象となる楽曲ごとに個別に処理することは、現実的には困難と思われます。
同じく、著作隣接権の送信可能化権についても、著作隣接権者(各レコード会社)との間で、協議・交渉し権利処理をする必要がありますが、やはり現実的には困難でしょう。
このように、著作隣接権に関しては、JASRACに類似する団体がないため、権利処理は極めて困難です。
ただし、ニコニコ動画では、一部レコード会社との間で、著作隣接権の送信可能化権についての権利処理を行っているようです(音楽著作物及び音楽原盤の利用に関するガイドライン)。ただし、ガイドラインによっても、複製権(リッピング等)も含めて処理済みなのかはよく分かりません。
また、一般社団法人日本DJ協会のプレスリリースによれば、同協会と一部のレコードレーベル(HANABI RECORDINGS等)との間で協議をし、著作権管理団体と利用許諾契約を締結している動画投稿(共有)サイトに限り、DJによる楽曲使用の許諾が得られたとのことです。当該許諾に基づく楽曲を使用してのDJ配信であれば、著作隣接権者との間で、原盤権の権利処理は不要と考えられます。
DJ配信と著作権の問題について、3回に渡って説明してきましたが、特に、著作隣接権の権利処理がネックとなりそうです。現時点では、権利処理の窓口となるような適切な団体はありません(役割的には日本レコード協会が担うべきではと考えますが)。いずれは、窓口となる適切な団体を設立するなりして、各レコード会社との間で、利用許諾に向けての協議を行う場を設けるべきではないかと思うところです。