TEL: 095-820-2500
[平日] 9:00~17:00
弁護士原幸生による記事です。
前回からの続きです。DJ配信の際に問題となる権利は、以下の通りですが、今回は下線部の権利について説明します。
〇著作権
公衆送信権 複製権 翻案権
〇著作者人格権
同一性保持権
〇著作隣接権
録音権(実演家) 送信可能化権(実演家) 同一性保持権(実演家)
複製権(レコード会社) 送信可能化権(レコード会社)
著作権者の許諾が無ければ、著作物を翻案することはできません。翻案というためには、既存の著作物を改変して、新たに創作性ある表現を付加する必要があります。
DJ演奏の場面では、BPM・ピッチ・EQ・エフェクト等の変更が、翻案に当たるのかという点が問題となりそうです。
ケースごとの判断になるでしょうが、BPMやピッチの変更自体に創作性が認められるケースは少ないように思います。また、4小節ないし8小節前後のmix程度であれば、新たな創作性は付加されていないと考える余地はあろうかと思います。演奏演奏技術が端的に表れる場面でもあり、創作性がないと言い切って良いのかはやや躊躇いを覚えるところではありますが、いずれにせよ、DJ文化自体の否定となりかねないため、安易に翻案権侵害を認めるべきではないでしょう。将来的には、契約ベースで翻案権を一括処理できるスキームの発展が望まれます。
なお、翻案権については、元の著作権者に留保されており、JASRACは権利者ではありませんので(法61条2項)、作曲者もしくは、作曲者の所属している音楽出版社が著作権者となります。
同一性保持権は、著作権ではなく、著作者人格権に属する権利です。著作人格権は譲渡できませんので、権利者はJASRACではありません。翻案権と同じく、作曲者もしくは、作曲者の所属している音楽出版社が権利者となるでしょう。
著作者は「意に反して」これらの「改変」を受けないとされており、著作者の許諾なく著作物を改変することはできません。
翻案権と同様の点が問題となるでしょうが、やはり、安易に同一性保持権侵害を認めるべきではありません。DJ演奏により、著作者の人格的利益が害されるとは考えにくく「改変」には当たらないとの考え方はあり得ますし、演奏するうえで避けられない「やむを得ない改変」(法20条2項4号)と考える余地もあると思われます。
今回は、著作者人格権まで検討しました。著作隣接権については次回。