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敗血症の原因が何かが問題となったケースで,当該医療機関側は,急性閉塞性化膿性胆管炎(AOSC)が原因であり,それを見逃したのは転送後の後医であるという主張をしました。
これに対し,患者側は,化膿性脊椎炎が原因であり,それを見逃したのは,当該医療機関であると主張しました。
まず,急性胆管炎を否定する準備書面の抜粋です。
3 重症急性胆管炎の所見
(1) 急性閉塞性化膿性胆管炎(AOSC)と重症急性胆管炎
急性胆管炎のうちには,「敗血症による全身症状をきたし,直ちに緊急胆道ドレナージを施行しなければ生命に危機を及ぼす」重症性胆管炎がある(科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン)。
なお,「Reynolds5徴をきたした胆管炎や概念的に最重症の胆管炎として」AOSCという用語が用いられてきたが,「その定義や診断根拠が曖昧で混乱がみられている」ため,ガイドラインは,AOSCという用語を用いず,代わって,最重症の「敗血症による全身症状をきたし,直ちに緊急胆道ドレナージを施行しなければ生命に危機を及ぼす胆管炎」を重症性胆管炎・重症急性胆管炎と定義した(同ガイドライン)。
(2) ガイドラインの重症度診断基準
仮にXに急性胆管炎が発症していたとして,被告が主張するように「直ちに緊急胆道ドレナージを施行しなければ生命に危機を及ぼす胆管炎」であったといえるかが問題である。
そこで,ガイドラインの急性胆管炎の重症度判定基準をみると,急性胆管炎のうち,次のいずれかを伴う場合は重症とされる。
ショック
菌血症
意識障害
急性腎不全
そうすると,被告が指摘するように,Xにはショックと意識障害があったので,仮にXに急性胆管炎が発症していたとすると,重症急性胆管炎といえそうでもある。
しかし,Xの状態は,次項のとおり,胆道ドレナージを行わなくても安定したのであって,重症急性胆管炎ではなかった。
(3) 胆道ドレナージの必要性
そもそも,重症急性胆管炎は,「保存的治療に抵抗性」のものをいい(同ガイドライン),抗菌薬は無効である。
しかし,本件では,抗菌薬として,入院日9月20日からペントシリンが,同月22日にはチェナム,ダラシンSが,同月23日からはチェナムが投与され,その結果,炎症は抑制されつつあった。即ち,炎症により高値を示すCRPが,次のとおり,いったん上昇したものの,下降に転じ,いまだ正常値にまでは回復していないが,安定していた。
9月20日 14.67mg/dl
9月21日 19.01mg/dl
9月24日 8.33mg/dl
9月27日 1.48mg/dl
9月29日 1.01mg/dl
このように抗菌薬に反応し,保存的治療が奏功していたのであるから,Xに胆道ドレナージの必要はなかった。
それは即ち,Xが重症急性胆管炎を発症していたのではなかったことを意味する。