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休業損害があくまでも現実の収入を基礎にするのに対して、逸失利益は、将来の収入の変化の見込みで、現実の収入を修正するといいました。
それはプラスの方向だけでなく、マイナスの方向にも働きます。
学生や若年者の場合は、プラスに修正するのですが、定年間近だと、マイナスに修正されます。
この問題、まだ、あまり議論されていないようですが、損害賠償請求の現場で多くのケースを扱っていると、確実にこの問題にあたることが増えてきました。この問題は、これから増えてくる難しい問題になりつつあります。
というのは、以前は、徹底した年功序列賃金で、定年までは給与が下がらないので、逸失利益の計算も、定年後の分について、基礎収入を減らして計算すればよかったのです。
しかし、経済情勢が厳しくなり、他方で、2013年4月1日施行の改正高年齢者雇用安定法において、定年が65歳まで引き上げられようとしています。
そこで、多くの企業で、55歳前後から、収入が下がるようになってきたのです。
そうすると、今後は、定年前でも、55歳前後を超えた人だと、下がった収入を基礎に逸失利益の計算をすることが普通になってくると思います。
原総合法律事務所で扱ったケースでも、既に、裁判になると、損保会社側からそのような主張が出てきています。
交渉段階では、事故前年の源泉徴収票の支払金額を基礎収入として逸失利益の計算をしていても、裁判になると、症状固定後の給与明細の開示を求められるようになりました。そして、定年間近で、給与体系上、収入が下がってきているのが分かると、損保会社側は、その下がった収入を基礎とした逸失利益を主張するのです。
それは、逸失利益の理屈からすると、やむをえない結論のように思います。