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ホーム > 法律の話(ブログ) > 交通事故 > よく問題となる傷病名から(医学的基礎) > 打撲した場所と一致しない脳の損傷
脳挫傷のような脳のけがは、打撲した場所とは違う場所に起こることがあります。
例えば、打撲したのが後頭部なのに、前頭葉(脳の前の方)に脳挫傷を負う場合があります。
これを「コントラ・クー(contre-coup)」といいます。日本語では「対側打撃」とか訳されるようですが、普通にコントラ・クーと使われます。
ちなみに、打撲した側にけがを負う場合は「クー(coup)」といいます。
なぜ、こういうことが起こるかというと、脳は頭蓋内に満たされた液体(脳脊髄液といいます。)の中に浮かんでいます。頭部に衝撃が加わると、まず頭蓋骨が移動し、遅れて脳が移動します。そこで、まず、衝撃が加わった場所の頭蓋骨に脳がぶつかり(クー)、次に、脳が反対側に引き戻され反対側の頭蓋骨にぶつかります(コントラ・クー)。
特に、後頭部を打撲したときは、むしろ脳の前の方が傷付く場合が多いとされています。
逆に、前頭部を打撲したとき、後ろの方を傷付けることは、そんなに多くはないとされています(なぜだか分かりませんが。)。
横(側頭部)から打撲したときは、両方とも同じように傷付くとされているようです。
医学の分野では常識ですから、損保会社から、打撲した場所とけがの場所が違うから交通事故とは無関係だなどといわれることはないと思いますが、被害者側とすれば、意外に思うことがあるかもしれません。
ちなみに、私は、弁護士になる前、司法修習生のときに、法医学の講義で「コントラ・クー」と聞いて、何だか賢くなったような気がしました(もちろん、気分だけですが。)。