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前回、既存障害と加重障害について、損保会社との交渉ではどうにもならないので、裁判しかないと説明しました。
今回は、それはなぜかということです。
損保会社は、後遺障害について、調査事務所の判断に従います。
この調査事務所がする後遺障害の判断の際、既存障害という判断をしてしまうのです。
そうすると、自賠責の損保会社は、もちろんその判断どおりにしか支払わないので、既存障害の部分の支払はしません。
自賠責の損保会社から回収できないのであれば、任意保険の損保会社もその支払はしません。
結局は、調査事務所の判断次第です。
そして、調査事務所の判断の基準が、自動車損害賠償保障法施行令2条2項です。そこには、こんなふうに書いてあります。
「法第十三条第一項の保険金額(自賠責保険の保険金)は、既に後遺障害のある者が傷害を受けたことによつて同一部位について後遺障害の程度を加重した場合における当該後遺障害による損害については、当該後遺障害の該当する別表第一又は別表第二に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額から、既にあつた後遺障害の該当するこれらの表に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額を控除した金額とする。」
この「既に後遺障害のある者」のデータベースが調査事務所に保管されているので、氏名・生年月日等で数十年前の事故の後遺障害の等級も、すぐに見付かるわけです。
そして、数十年前の事故の後遺障害でも、データが残っていれば、機械的に既存障害と判断します。
これに対し、裁判所は、既存障害が既に軽快ないし改善している場合には、機械的に既存障害を差し引くのではなく、現在の症状のみで判断するのです。