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被告は,「『脊柱に変形を残すもの』の場合,機能的には労働能力喪失率にさほど影響を及ぼさない場合も考えられる。」と主張し,労働能力喪失率を20%とすることに疑問を呈している。
確かに,脊柱変形については,労働能力の実質的喪失に否定的な見解があり,損害賠償実務において,損保会社から同旨の主張がなされることがある。
しかし,裁判実務は,高度の脊柱変形が,脊椎の骨折という器質的異常により脊椎の支持性と運動性の機能を減少させ,局所等に疼痛を生じさせ得るものであるという点を重視し,原則として喪失率表の定める喪失率20%を認めている(片岡武裁判官『労働能力喪失率の認定について』赤い本裁判官講演2004年版・合本Ⅲ337頁)。ちなみに,上記片岡論文以前には,損保会社側がよく引用していた脊柱変形の労働能力喪失率を減ずべきとする井上久医師,平林洌医師の意見があり,それに依拠して労働能力喪失率を減ずる下級審裁判例もあったのであるが,その傾向を否定したのが片岡論文であった。以後の下級審裁判例は,脊柱変形について,労働能力喪失率を減じないのが大勢となった(高木宏行「労働能力喪失率が問題となる類型-最近の裁判例の傾向-」交通事故相談ニュース26号3頁)。
そして,原告の場合,…(略)…
よって,本件では,11級の一般的な労働能力喪失率20%が認められるべきである。