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本を買ったり図書館から借りたりした場合、その本の内容をコピーしたり書き写したりすることは、普段何気なくなされています。
また、レンタルCDショップでCDを借りてきて、パソコンに取り込んだりコピーをすることも、何気なくなされています。
そのような場合、特に深く考えずに何気なくコピーをしている人もいるかもしれませんし、「今自分のしていることはもしかしたら違法なのではないか」と思いながらコピーをしている人もいるかもしれません。
それでは、そういったコピーをする行為は法律違反となるのでしょうか。
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まず、本を買ったり借りたりした場合に、その本の内容をコピーすることは許されるのでしょうか。
この点、他人が書いた本をコピーする場合、原則として本を書いた人の許可が必要ということになっています。
しかし、どのような場合にも許可が必要というのではあまりに窮屈ですから、いくつか例外が認められています。
例えば個人的に使う目的(「私的使用目的」)であれば、許可が無くとも本のコピーをすることが許されています(著作権法第30条)。
しかしながら、あくまで私的使用目的に限られるので、注意が必要です。ちなみに、「私的使用目的」とは「個人的又は家庭内その他これに準じる限られた範囲」とされています。
そうすると、コピーしたものを他人に渡すような場合には、もはや私的使用目的の範囲を超え、違法となってしまう可能性があります。
ちなみに、会社内で本や雑誌をコピーすることなどについて、質問を受けることがあります。
例えば、「会社の社員に研修をする際に、研修として配る目的で本や雑誌をコピーすることは許されるか」という質問を受けることがあります。
この点、学校の授業などで本や雑誌のコピーが配られることがありますが、このような「学校その他教育機関」におけるコピーは、著作権者の許可は不要とされています(著作権法第35条1項)。
そうであれば、会社で研修をするような場合も、教育目的としてコピーが許されるのではないかと聞かれたことがあります。
しかし、会社はあくまで営利を目的とする組織であり、教育機関ではありません。
また、会社で研修をする場合は、会社の業務の一環ということになりますから、個人的に使う目的(「個人使用目的」)ともいえません。
ですから、会社で研修をする際に本や雑誌のコピーをして社員に配りたいというような場合は、本を書いた人の許可を得なければ、原則として法律違反ということになってしまいます。
もっとも、いちいちコピーをする度に著作権者の許可をもらうのでは面倒ですから、日本複製権センター(JRRC)が著作権を集中的に管理しており、各会社がJRCCとの間で「著作物複写利用許諾契約」を締結すれば個別の許可を取ることは不要です。
CDについても、本の場合と同じく、個人的に使う目的であれば、コピーをしたりパソコンに取り込んだりすることができます。
ただ、音楽の場合は、ダウンロードして録音するという方法も一般的となってきているため、様々な問題が発生してきています。
例えば、音楽をダウンロードする場合には、正規のサイトからのダウンロードであれば問題ありません。
しかし、違法に公開されたデータであれば、違法と知りダウンロードすることは、それ自体違法となりますので、注意が必要となります。
これまでお話ししてきた本やCD以外にも、様々な物について、コピーが問題となりえます。
例えば、パソコンのソフトウェアのコピーなども問題となります。
パソコンのソフトウェアについては、ソフトウェアを作った人との契約(「ライセンス契約」、「使用許諾契約」)にしたがって利用する必要があります。
契約の内容はそれぞれのソフトウェアによって違いますので、それぞれのソフトウェアの契約内容を確認する必要があります。
例えば、そのソフトウェアをコピーしてよいかどうか、コピーしてよいとしたらいくつコピーしてよいのか、何台のパソコンにインストールしてよいのか、などの点について、ソフトウェアごとに契約内容が違いますので、注意が必要です。
これまで書いてきたような話は、法律上の専門用語でいうと「著作権」の話ということになります。
「著作権」とは、一言でいうと、文化的な創作活動を行った人に認められる権利です。
つまり、「著作権」とは、文化的な創作活動を行った人(「著作者」)にさまざまな権利(「著作権」)を認め、その権利を保護することによって、文化を発展させていこう、という権利です(著作権法第1条)。
著作権については、主に「著作権法」などの法律が定められています。
もし著作権が侵害された場合には、損害賠償の請求などができることになります。
「著作権」と似たような権利として、「特許権」「実用新案権」「意匠権」「商標権」などの権利があります。
これらの権利は、産業を発達させていくために、産業面での知的活動を行った人の権利を保護するために認められた権利です。ちなみに、これらの権利については、それぞれ、「特許法」「実用新案法」「意匠法」「商標法」といった法律が存在します。
文化的な活動を保護するさきほどの「著作権」も、産業的な活動を保護するこれらの権利も、知的な活動を保護するという点で共通します。
このような、知的な活動を保護するための権利は、まとめて「知的財産権」などと呼ばれています。
そして、「知的財産権」を保護するための法律を、まとめて「知的財産法」と呼びます。
「知的財産法」と呼ばれる法律には、これまで出てきたとおり、「著作権法」「特許法」「実用新案法」「意匠法」「商標法」などがあります。
今回主にお話ししてきた「著作権」の分野は、今まさに発展を続けている分野です。
なぜなら、最近では、インターネットや携帯電話などの技術の発達により文化的な活動の幅がどんどん広がっているからです。
しかしながら、技術が発達すればするほど、新しい問題が次々に発生します。
新しい問題が発生すると、法律の改正などにより、問題の解決がなされます。
例えば、外国で複製された海賊版CDが日本国内で出回った時期がありました。しかし、安い海賊版が出回ると通常の価格のCDが売れなくなり、音楽の発展が邪魔されるということから、著作権法の改正がなされ、海賊版CDの輸入が規制されることになりました(著作権法113条1項)。
このように、新しい問題が発生すると、法律を改正するなどして問題を解決することになりますが、最近は技術の発展のスピードが早すぎるため、法律の改正のみで問題を解決するのが難しい状況になってきています。
今後は、どのようにして「著作権」を守るのかということが、課題になっていくと思います。
ちなみに、最後になりましたが、「著作権」の侵害にはならないケースであっても、他の法律に違反することもありますから、注意をする必要があります。
例えば、書店で本や雑誌の内容を携帯電話のカメラで撮影した場合、ただ個人的に使うためであれば、「私的使用目的」の範囲を超えない複製ということになり、「著作権法」には違反しないと考えられます。
また、画像データとして保存するのみであって、財物である「本」そのものを窃取するわけではありませんので、窃盗罪も成立しません。
ただし、無断で撮影する行為はお店の営業を邪魔することにもなりかねませんから、業務妨害罪に当たる可能性はありますし、建造物侵入罪に当たる余地もあります。
このように、ある法律に違反しないとしても、他の法律に違反することがあるというのが、法律の難しいところかもしれません。