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医学文献,医学論文には,その位置付け,信頼性等において様々なものがある。
まず,大学医学部における教育課程で教科書として用いられる標準的な文献は,作成時の各診療科の標準的な知見を取りまとめたものとして,十分,参考に値する(例えば,医学書院標準シリーズ,海馬書房ステップシリーズ等)。
しかし,それだけでは,臨床医が,臨床の現場で遭遇する種々の疾病の知見としてなお足りない。いわば臨床医レベルの教科書という位置付けが「成書」といわれるものである(例えば,洋書としてハリソン内科学,和書として朝倉内科学,中山内科学書等)。
さらに,臨床医に最近の診療方法を紹介するマニュアルとして,医学書院今日の治療指針シリーズ等がある。
そして,特に,エビデンス(*)とコンセンサスに基づき,その時点での最良と考えられる診療方法をまとめたものが,ガイドライン(*)である。
* ここでガイドラインとは,我が国においては1999年ころ以降(欧米においては1990年ころ以降),個々の医療従事者が裁量の範囲内で様々な医療行為を行なっている現状を整理し,EBM(Evidence-based Medicine)の手法により科学的根拠に基づいた診療を推奨・普及することを目的として策定されたものをいう。
* 我が国のガイドライン作成の基準とされるMinds診療ガイドライン選定部会監修『診療ガイドライン作成の手引き2007』(http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/glgl/glgl
.pdf)は,エビデンスのレベルを次のようにまとめる(同書15頁)。
エビデンスのレベル分類(質の高いもの順)
Ⅰ システマティック・レビュー/RCTのメタアナリシス
Ⅱ 1つ以上のランダム化比較試験による
Ⅲ 非ランダム化比較試験による
Ⅳa 分析疫学的研究(コホート研究)
Ⅳb 分析疫学的研究(症例対照研究,横断研究)
Ⅴ 記述研究(症例報告やケース・シリーズ)
Ⅵ 患者データに基づかない,専門委員会や専門家個人の意見
これに対し,一般市民向けのいわゆる啓蒙書等の類いには,上記のような承認された知見を分かりやすく解説する優れたものもないではないが(必ずしも,一般市民向けとはいえないが,例えば,メディックメディア病気がみえるシリーズ),エビデンス(*)もなければ,コンセンサスも得られていない独自の見解を説くものも少なくない。