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相当因果関係の判断枠組み

 医療過誤などの損害賠償請求では、過失と損害(死亡等)との関連(相当因果関係といいます。)があるのかが問題になります。この点を簡単にまとめた書面の例です。

2 相当因果関係の判断枠組み
(1) 「訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし,かつ,それで足りる」(最判昭和50年10月24日民集29巻9号1417頁)。

 そこでは,「高度の蓋然性」の証明が求められているが,最高裁の要求する「高度の蓋然性」の程度は,下級審が認識するところより低いのではないかという指摘があり(座談会「民事訴訟における証明度」判タ1086号4頁),近時,この点で,患者側の請求を棄却した高裁判決を破棄する最高裁判決が相次いだところである。
 そして,この理は,不作為にも妥当し,「経験則に照らして統計資料その他の医学的知見に関するものを含む全証拠を総合的に検討し,医師の右不作為が患者の当該時点における死亡を招来したこと,換言すると,医師が注意義務を尽くして診療行為を行っていたならば患者がその死亡の時点においてなお生存していたであろうことを是認し得る高度の蓋然性が証明されれば,医師の右不作為と患者の死亡との間の因果関係は肯定されるものと解すべきである。」(最判平成11年2月25日民集53巻2号235頁)。

 ただ,作為の不法行為と不作為の不法行為の判断の在り方には,無視しがたい相違があり,「不作為の不法行為の場合につき,身体に対する物理的な侵襲行為があり因果関係が周辺事情を交えていわば目に見える場合についてと同じ『心証』(両者の違いを考えると,むしろ『心証の感触』とでもいうべきものであろうが)を必要とすべきものとすると,不可能を強いるとまではあえていわないにせよ,明らかに限界の存在する事項を要求することとなり,結果において,因果関係の存在について立証責任を負う原告側に不利益な帰結を招く可能性が高い。」(八木一洋「判解平成11年度〔7〕事件」144頁)。