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<はじめに>
交通事故に遭ってしまった場合・・
① 怪我について治療を受ける,
② 損害の賠償について保険会社(加害者)と交渉することになります。
①けがについては医師と相談しながら、②損害の賠償については弁護士と相談しながら進めてきましょう。
○ 事故発生~示談(解決)までの大まかな流れとポイントを確認しておき、具体的な点や詳細は弁護士に相談して聞くとよいでしょう。 大切なのは相談の時期・ポイントを見逃さないことです。
<事故発生~治療中>
保険会社も治療終了までは、示談を求めてこないのが通常です。
治療が終了しないと治療費の総額や、通院に必要な交通費などが確定しないので、示談のしようがないからです。
また、休業損害(入通院のために仕事を休んだことで受けた損害)、入通院を強いられたことによる慰謝料(入通院の日数が基準となります)も確定しません。
そのため、保険会社も示談の提案をしようがありません。
そこで、治療が終了してから賠償額(示談の案)が提案されることになります。
○ とりあずは治療に専念しましょう。
ただ、交通費(タクシー代など)や文書作成費用(診断書など)など、事故に関して支出した費用については何でも領収証をとって保管しておきましょう。
また、休業損害証明書などの書面を保険会社に提出する場合、コピーを手元に取っておくと便利です。
☆ ポイント 「治療打ち切り」
保険会社から、治療を打ち切られる(治療費の支払いを打ち切られる)ことがあります。
治療打ち切りは、「もう症状は固定して,治療の必要はなくなったはずだから、これ以上の治療費は出しません。」ということです。
もちろん治療を続けることはできますが、保険会社はお金を出してくれないので、自費で治療を受けることになります。
また、休業損害の支払いも止められてしまいますので、いきなり生活費・治療費に困ることになります。
治療打ち切りは、いわゆる「むちうち」(頸部捻挫・頸部打撲)の場合に多く発生します。
「むち打ちについては、一般的に3か月程度で症状固定となるから。」と治療費の支払いを打ち切ってくるのです。
不当な治療費の支払打ち切りに対しては、支払いを仮に求める仮処分などの手続きを利用します。自賠責保険分の支払いを請求して、当面の治療費を確保することもあります。
ただ、カルテを確認して、治療内容がリハビリ的なものだけになっており、実際に治療による改善がみられなくなっているようであれば,症状固定を認めて、示談を進めたり、後遺障害等級の認定を受けるなどした方が有利なこともあります。
◇ 知っておきたい用語の解説 「症状固定」
・・治療を続けても回復・改善が期待できなくなった状態のこと。
痛み止めやリハビリ・マッサージなどで一時的に症状が緩和するとしても、症状固定となります。
症状固定後に残っている症状(痛み・しびれ・首などを動かせる範囲が狭まった等)については、「後遺障害」として扱われます。
保険会社としては、「治療を続けても回復・改善が期待できないのであるから、症状固定後の治療費は払わない」と主張するわけです。
裁判となっても、症状固定後の治療費は「否定される場合が多い」とされています。
◇ 知っておきたい用語の解説 「医療照会の同意書」
・・・保険会社が病院へカルテの開示などを請求することに同意すること。
保険会社は、病院にカルテなどの開示を求めます。治療内容や治療費を確認しないと、治療費を払うべきか、いくら払うべきか判断できないからです。
同意したくないという気持ちもあるかもしれませんが、同意しないと保険金の算定が十分にできず、支払われない可能性があります。
<治療終了~後遺障害認定>
治療が終了し、後遺障害が残らなかった場合は,示談を進めることになります。
後遺障害が残った場合は、その程度を決めることになります(後遺障害の等級といいます。)。
後遺障害が認められると賠償額も高くなります。そこで、まずは後遺障害が残っているかどうかを検討することになります。
後遺障害等級認定は、損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)が行いますが、自賠責保険を担当している保険会社を通じて申請します。
申請の際に必要になるのが、「後遺障害診断書」です。その内容によって、後遺障害の認定が変わることもあり得ますので、重要な書類です。弁護士や医師と相談してきちんとしたものを作成する必要があります。
○ 治療の終了時期や後遺障害の申請については、担当の医師や弁護士と相談しましょう。
後遺障害診断書やその他の書類は、保険会社に出す前にコピーを手元に取っておくと便利です。
後遺障害の事前認定を申請し、適切な等級が認定されれば、示談交渉に進むことになります。認定された等級に不満がある場合は、異議を申し立てることができます。
☆ ポイント 「後遺障害診断書」
後遺障害の申請の際には、後遺障害診断書が必要になります。これは、主治医に現在残っている障害の内容を書いてもらうもので、非常に重要な書面になります。
等級が認定されるには、自賠責法施行令の別表に掲載された後遺障害に該当することが必要です。
そこで、所定の後遺障害の認定要件に該当することが明確になるように記載する必要があります。
たとえば、画像所見(MRI,CT,レントゲンなど)・神経学的検査の結果・可動域の制限・疼痛の内容(程度・頻度・持続時間・部位・痛みの性状)・筋力テストの結果などを記載してもらうなどの工夫が必要になります。
ただ、医師は医学の専門家で法律実務の専門ではないので、「等級が認定されやすい診断書の書き方」という視点で診断書を書くわけではありません。
そのため、せっかく各種テストなどをしているのに、医学的に必要な部分のみを記載するだけにになっているもの等もあります。
通常の診断書であれば、それでよいのですが、後遺障害の認定の資料として使用するものとしては不十分なことがあります。
そこで、後遺障害診断書を提出する前に、一度、弁護士に相談してみてもらうとよいでしょう。
◇ 知っておきたい用語の解説 「後遺障害」
簡単言えば症状固定後に残った症状でのことです(痛みやしびれなど)。
後遺障害については、1~14級まであります(1級が最も重い)。審査の結果、「非該当」とされることもあります。障害が重くなるほど、賠償額は高くなります。
※ 厳密な意味での「後遺障害」
交通事故と相当因果関係が認められ、その存在が医学的に認められるもので、労働能力の喪失を伴うもので、その程度が自賠法施行令の等級に該当することが必要です。
◇ 知っておきたい用語の解説 「任意一括」
通常は、任意保険の保険会社(自賠責の保険会社とは別です。たまたま同じこともありますが。)が自賠責保険の手続きもしてくれます(「任意(保険)一括払制度」「任意一括」などといわれます)。
任意保険は、自賠責保険で賠償されなかった部分について支払いをするものですが、任意保険の保険会社がとりあえず自賠責で補償されるべき部分も含めて支払い、後で自賠責から回収しています。これが自賠責と任意の一括手続きです。
この任意一括を解除して、自分で自賠責保険への請求手続きをすることもできます。
後遺障害の等級認定の申請も、特に問題がなければ任意保険の保険会社に申請手続きをしてもらいます。
ただ、任意保険会社が「仮病」だと主張しているような場合などは、手間はかかりますが直接自分で自賠責の保険会社に申請した方がよいことがあります。仮病を疑っている任意保険の保険会社が、申請の際に不利な資料を添付することがないとはいえないからです。
また、任意一括を解除して、自分で自賠責の手続きをして支払いを受けて、そのお金で弁護士費用を払ったり、当面の生活費を確保したりすることもあります。
<交渉~示談>
交渉ができる状態(治療終了・後遺障害等級認定手続終了)となると、保険会社から最初の提案があります。
各損害項目と、それぞれの金額が記載されています。
例えば・・
治療費 ○○円
入院雑費 ○○円
慰謝料 ○○円
過失相殺 ○○%
既払い額(差引) ○○円
小計
今回お支払金額 ○○円
提案が来たら、弁護士に相談しましょう。
相談の際は、提案の文書はもちろん、資料一式を用意しておくとスムーズです。
○ 弁護士に相談し、裁判をした場合の賠償金額の見通し、弁護士が代理人として交渉した場合の見通し・弁護士費用を教えてもらいます。
たとえば裁判になっても50万円程度の増額しか認められないが、費用は30万円以上かかるという場合は、慰謝料に上乗せをしてもらい早く示談した方がよいという判断になりやすいでしょう。
反対に、弁護士に頼んで裁判をすれば数百万円増額できるようなら、裁判をした方がよいとの判断になりやすいでしょう。
そのような判断をするためには、見込みや弁護士費用が分からないと判断できません。
そこで、相談を受けることが必要になります。
なお、後遺障害が重かったり、死亡事故の場合は、保険会社の提案と裁判をした場合の金額の差が大きくなりやすくなります。
<裁判をした場合のメリットとデメリット>
裁判をした場合、どうなるのでしょうか。
■メリット
賠償額の算定基準が上がる
弁護士費用(損害額の10%程度)の請求が認められることが多い
判決になれば遅延損害金も支払わせることができる
過失相殺・後遺障害・治療の必要性などについて保険会社が争って支払いを拒否していても、裁判で認められれば支払いをさせることができる。
■デメリット
時間がかかる(1年程度~・・内容によります)
費用がかかる
労力がかかる
※ただ、弁護士に頼んでいれば、実際に本人が裁判所に行くのは1~2回で済むことが多いです。
○ 裁判となれば、やはり時間と費用がかかります。弁護士に相談して、裁判をした場合のメリットとデメリットをしっかり確認してから、決めましょう。
<交通事故と弁護士の費用>
弁護士の費用は請求額・認められた額により決まります。
交渉の場合は、裁判の場合よりも安くなっています。
なお、別途実費か掛かります(通常は数万円程度ですが、鑑定をしたりたくさんのカルテを取り寄せた場合などは、高くなることもあります。)。
例えば・・ 交渉で300万円請求し、300万円の請求が認められた場合
合計で50万4000円と実費がかかることになります。
この場合、保険会社が150万円の支払いしか提案してきていないなら、弁護士費用をかけてでも弁護士に頼んだ方が得することになります。他方、保険会社が250万円を支払うと提案しているなら、弁護士を付けて50万円の費用をかけても、意味がないことになります。
※弁護士費用の目安は、次の表のようになります(消費税込み)。
交渉の場合
経済的利益 | 着手金 | 報酬 | 合計 |
---|---|---|---|
100万円 | 10万5000円 | 11万2000円 | 21万7000円 |
200万円 | 11万2000円 | 22万4000円 | 33万6000円 |
300万円 | 16万8000円 | 33万6000円 | 50万4000円 |
400万円 | 20万3000円 | 40万6000円 | 60万9000円 |
500万円 | 23万8000円 | 47万6000円 | 71万4000円 |
600万円 | 27万3000円 | 54万6000円 | 81万9000円 |
700万円 | 30万8000円 | 61万6000円 | 92万4000円 |
800万円 | 34万3000円 | 68万6000円 | 102万9000円 |
900万円 | 37万8000円 | 75万6000円 | 113万4000円 |
1000万円 | 41万3000円 | 82万6000円 | 123万9000円 |
2000万円 | 76万3000円 | 152万6000円 | 228万9000円 |
裁判の場合
経済的利益 | 着手金 | 報酬 | 合計 |
---|---|---|---|
100万円 | 10万5000円 | 16万8000円 | 27万3000円 |
200万円 | 16万8000円 | 33万6000円 | 50万4000円 |
300万円 | 25万2000円 | 50万4000円 | 75万6000円 |
400万円 | 30万4500円 | 60万9000円 | 91万3500円 |
500万円 | 35万7000円 | 71万4000円 | 107万1000円 |
600万円 | 40万9500円 | 81万9000円 | 122万8500円 |
700万円 | 46万2000円 | 92万4000円 | 138万6000円 |
800万円 | 51万4500円 | 102万9000円 | 154万3500円 |
900万円 | 56万7000円 | 113万4000円 | 170万1000円 |
1000万円 | 61万9500円 | 123万9000円 | 185万8500円 |
2000万円 | 114万4500円 | 228万9000円 | 343万3500円 |