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そのとき、私は弁護士会の仕事の関係で東京都内にいました。建物が数分にわたって大きく横揺れし、建具の戸がパタンパタンと音をたてました。大地震だと思ってテレビを見ると、震度が速報され、やがて被害の様子が次から次へと映し出されていきます。
大変なことになったというのはすぐに分かりました。また、弁護士・弁護士会として何をなすべきかということも、会長だった立場から、すぐに頭をよぎりました。
思い起こせば20年前の雲仙普賢岳噴火災害のとき、私は復興に向けての弁護士会の意見をとりまとめる作業に関わったことがありました。そのときが、弁護士会の大規模災害に対する初めての本格的な取組みだったような気がします。
日弁連では、震災被害に関する法律相談に対応するため、すぐに災害時の弁護士の役割や震災に特有な法律問題に関する研修を千人規模で行いました。平行して、現地では弁護士会の体制の立て直しにも時間がかかることから、近隣の弁護士会が先行してフリーダイヤルの電話相談を開始しました。その後、現地の弁護士会の体制も整い、現地の弁護士会の電話相談、避難所での出張相談なども始まっています。もちろん、被災者の皆さんの相談には無料で対応しています。
では、長崎の弁護士は何ができるのか。まず、弁護士会としても義捐金を集めていますが、私たちに求められているのは、法律を扱うプロとしての支援のはずです。そして、既に、長崎県内にも避難して来られている被災者の方々がおられます。私たちは、県内の被災者の皆さんの相談を受けるための体制を整え、必要な場所には出向いて、その相談に応じなければならないと考えています。被災者の皆さんに寄り添い、その「心」のケアにも配慮し、被災者の皆さんに震災に関する法律知識を浸透させていくことが、私たちが取り組むべき第一の課題だと思っています。
ただ、今回の震災は、数県にわたる地域全体が壊滅的な打撃を受けたその規模の大きさからも、また長期にわたる原子力災害の様相を呈していることからも、これまでの法律の枠組みでの救済、復興には限界があるように感じています。
私たちは、在野の法律家として、被災者の視点から、その救済と復興に向けた、立法も含めた政策課題に対して、必要な提言を行っていかなければならないと考えています。
雲仙普賢岳噴火災害を経験し、また、原子爆弾による放射線の人体に対する影響にも一定の知識のある私たち長崎の弁護士が果たすべき役割は大きく、その期待に応えていくことが求められていると決意を新たにしているところです。
(長崎新聞 2011年(平成23年)4月8日掲載)