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心の病気や認知症にかかることは誰しもありえることであり、その結果、記憶能力や判断能力が衰えてしまうときがあります。
そのような場合、一人だけで生活することは難しくなります。
また、悪い人に必要もない物を売りつけられたり、お金などの持ち物をだまし取られてしまうかもしれません。
このように記憶能力とりわけ判断能力が著しく衰えた場合に、その人の生活への配慮や財産管理をしてくれる「後見人」をつける制度が、「法定成年後見制度」と「任意後見契約」です。
後見人をつけてもらった人を「被後見人」といいます。
選ばれた後見人は、まず、被後見人の生活に支障がないように必要な法律事務を行います。
たとえば、被後見人の日常生活に介助が必要である場合には、被後見人の財産を利用して、介護士を付ける契約を結んだりします。
後見人が、現実に介護を行う義務を負うわけではありませんので注意してください。
次に、後見人は、被後見人の財産を適切に管理します。
たとえば、誰かが勝手に被後見人の財産を奪ったりしないように後見人は注意し、目減りしないために必要なことをしたりします。
「後見人」には、保護を受ける人の親族がなることが多いのですが、場合によっては、弁護士などの第三者がなることもあります。
では、「法定成年後見制度」と「任意後見契約」の違いについて、詳しく見てみましょう。
「法定成年後見制度」は、被後見人の事前の準備がない状態で判断能力が著しく衰えてしまった場合の制度です。
なお、判断能力低下の程度に応じて、最も保護が必要な人に対しては「後見人」が付されますが、「後見人」に比べて保護の必要性が軽い人には「保佐人」、更に必要性が少ない人には「補助人」が付されます。
この制度を利用するためには、家庭裁判所に対し、「後見等の開始審判の申立て」をします。
申立てができるのは、原則として、本人、配偶者(自分の夫または妻のこと)、4親等内の親族(親、子、祖父母、孫、おじ、おば、いとこなどです。)です。
保護を受ける人の判断能力の低下の程度に応じ、「後見開始審判申立て」、「保佐開始審判申立て」、「補助開始審判申立て」のいずれかを行います。
どの申立てを行うかは、医師に所定の診断書を書いてもらい、それを参考にして判断することになります。
家庭裁判所への申立ては、「申立書」を作成して提出します。
申立書には、申立人の戸籍謄本、保護を受ける人の戸籍謄本及び戸籍附票、後見登記なきことの証明書(各都道府県の地方法務局が発行しています。)、診断書を添付します。
申立てにあたっては、諸費用が1万円程度かかります。
「後見開始審判申立て」又は「保佐開始審判申立て」がなされると、家庭裁判所は事案調査とともに、原則として、保護を受ける人の判断能力について「鑑定」という専門的な調査を行います。
この鑑定には、5~10万円程度の鑑定費用が必要です。
家庭裁判所が全ての調査を行い、必要と認められれば、「後見等開始審判」が出され、成年後見人等が選任されます。
なお、申立てや鑑定に必要な費用は、申立人が納めなければなりません。
「任意後見契約」は、被後見人がまだ判断能力が衰えていないうちから、心の病気や認知症などにより判断能力が低下したときに備えて、前もって自分が信頼できる人に将来の「任意後見人」になってもらえるように委任し、自分が援助して欲しい事項をあらかじめ決めておく制度です。
法定成年後見制度に比べると、事前の準備ができる分、誰に後見人になってもらうか、どのようなことを後見人に任せるかなど、被後見人の希望を実現させることができるというメリットがあります。
任意後見契約を利用するためには、まず、自分が信頼できる人(家族、友人、弁護士、司法書士等の専門家)に任意後見人を依頼し、了解を得なければなりません。
そして、自分の判断能力が低下したときに任意後見人に援助して欲しいことを決めておきます。
その内容をまとめて公証人役場に持って行き、公証人に公正証書を作成してもらうことになります。
公証人役場とは、契約や書面の内容を公証人(裁判官や検察官を退職した人がなっています。)という人が公に証明してくれるところであり、任意後見契約を公正証書にすることは必ず必要とされています。
公正証書にする費用としては、およそ2万円程度の費用がかかります。
その後、任意後見契約により保護を受けるべき人の判断能力が低下したとき、その人が任意後見契約内容の実行に同意したことを条件として、親族又は任意後見人となる人が家庭裁判所に任意後見契約の内容どおりの効力発生のための申立てを行います。
具体的には、任意後見人を監督する「任意後見監督人」を家庭裁判所に選んで欲しいという申立てです。
その結果、家庭裁判所により任意後見監督人が選ばれれば、任意後見人は、任意後見契約に従った仕事を行うことになります。