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そもそも「閾値(いきち)」という言葉が聞き慣れない言葉です。「しきい値」ともいいますが、影響が表れる境目の値のことをいいます。
これ以上の加速度や速度変化がないと、むち打ち損傷が表れない値があるとして、その閾値を超えない低速度の衝突だから、むち打ち損傷は発症しないという理屈付けに使われます。
このむち打ち損傷の閾値という考え方が誤っているとするのが、前回紹介した事故解析共同研究会の実験結果です。
その実験結果によれば、被験者72名のうち19%にあたる14名が何らかの自覚症状を訴えましたが、これらの者は、速度変化が3.6ないし8.6km/h、車体の平均加速度が1.1ないし2.1g程度であって、閾値論からは受傷するはずのないケースでした。
また、その実験結果によれば、頚部の過伸展、過屈曲がなくても、症状が表れることが分かりました。生理的な可動範囲におさまっている伸展、屈曲であっても、むち打ち損傷が発症するのです。
そうするとむち打ち損傷やむち打ち症という呼び方自体が正確でないということになります。そういう事情もあって、外傷性頚部症候群という呼び方が使われるようです(それでも、このブログでむち打ち損傷という呼び方を使う理由について→こちら)。