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ホーム法律の話(ブログ)交通事故よく問題となる傷病名から(医学的基礎) > 椎間板ヘルニアの素因減額-事故前に「疾患」があったか

椎間板ヘルニアの素因減額-事故前に「疾患」があったか

前回の最高裁判決の枠組みでは、まず、事故前に「疾患」があったかが問題になります。

そこで、椎間板ヘルニアそのものが、「身体的特徴」にとどまるか、「疾患」といえるかについては、「疾患」にあたるとされています。加齢により発症率は高くなりますが、比較的高齢であっても、発症する人はそんなに多くはないので、年齢相応の「身体的特徴」とはいえないというのです。
椎間板ヘルニアそのものが「疾患」にあたらないというような主張は、有効ではありません。

重要なのは、椎間板ヘルニアが、事故前にあれば、それは素因減額の対象となる「疾患」ですが、事故により発症したのであれば、それは、事故による怪我そのものであって、素因減額の対象にはならないということです。
事故後、椎間板ヘルニアが見付かった場合、まず検討すべきは、それが事故前からあった椎間板ヘルニアなのか、それとも事故により発症した椎間板ヘルニアなのかという点です。

とはいっても、事故直前にMRIを撮っていて、事故直前に椎間板ヘルニアがなかったことが確認できるようなケースはまずありません。
結局は、事故前の症状の有無、事故前の受診、診断の有無等から考えるしかありません。

そして、実際に、事故により発症した椎間板ヘルニアだとして、素因減額しなかった判決があります。
例えば、神戸地裁平成13年12月5日判決です。事故前に腰椎椎間板ヘルニアと診断されたことがなく、そのような症状も出ていなかったこと、その事故の態様でもヘルニアが発症する可能性があることを理由に、事故によりヘルニアを発症したことを認定しました。
また、東京高裁平成20年1月24日判決もそうです。頚椎椎間板ヘルニアが加齢によるものであると認めるに足りる証拠がないとして、事故後の神経症状を、頚椎椎間板ヘルニアが事故の際に生じたか又は悪化したことにより生じたものと認めました。

被害者側弁護士としても、まず、この判決の考え方が使えないか、事故前の症状の有無、事故前の受診、診断の有無等を確認する必要があります。