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前回、特殊な例を上げてしまったので、改めて、共同不法行為の基本です。
数人が、共同して1つの事故を起こした場合を共同不法行為といいます。
共同不法行為の典型として、よく使われる例が、タクシーに乗っているとき、出会い頭の事故にあった場合です。
出会い頭の事故だと、どちらの車にも過失があります。
例えば、自分が乗っていたタクシーの過失割合が3割、衝突した相手の車の過失割合が7割だとします。
被害者としては、タクシーの側に3割、衝突した相手に7割の損害賠償の請求をしなければいけないかというと、そうではなく、被害者は、両方に全額を請求できます。
ただ、二重取りできるわけではなく、どちらか一方から、あるいは両方からあわせて、損害の全額の賠償を受けた後は、もう残りの請求はできません。
こういう関係を連帯債務(正確には、不真正連帯債務)といいますが、これが共同不法行為の効果です。
過失の割合の範囲で、それぞれが責任を負うということにすると、被害者としては、それぞれの過失の割合を見定めて、分けて請求しなければなりません。その一方が自動車保険(任意保険)に入っていなかったりすると、全額の損害の賠償を受けられないことにもなりかねません。
それでは、被害者救済にならないので、共同して1つの事故を起こした場合には、加害者・被害者間では、両加害者に全額の賠償義務を負わせ、その後、払いすぎた加害者が、もう一方の加害者に払いすぎた分の請求をすればいいとしたのです(求償といいます。)。
この共同不法行為の特殊な例が、前回説明した、2回の事故により、症状・後遺障害が発生したのだけれど、どちらがどれくらい影響したか、寄与度が分からないという場合でした。
あと、交通事故で治療を受けていた医療機関のミスで、症状・後遺障害がひどくなったような場合も、1つの事故ではないけれど、交通事故と医療過誤の共同不法行為が成立する場合があるとされています。交通事故と医療過誤の共同不法行為については、またいつか改めて。