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ホーム > 法律の話(ブログ) > 交通事故 > よく問題となる傷病名から(医学的基礎) > 交通外傷によるストレスがくも膜下出血を発症させる医学的な証明
前回、交通事故による過重な精神的負荷、身体的負荷が、脳動脈瘤を「自然の経過を超えて増悪させ」、くも膜下出血発症に至った場合には、くも膜下出血発症も交通事故による賠償の対象とすべきだと思うと言いました。
とはいっても、医学的に、交通事故のストレスがくも膜下出血を発症したことを明らかにすることは、多分、無理です。
原総合法律事務所で扱ったケースでも、主治医は、交通事故とくも膜下出血との因果関係は、医学的には立証困難との意見を述べました。
また、くも膜下出血を専門とする脳外科医に話しを聞いたことがありますが、やはり、そういうストレスがくも膜下出血を発症したと医学的に証明することは難しいという意見でした。
それでも、くも膜下出血に対する個々のリスクファクターの相対リスクについて、高血圧は、有意差が確認されています(相対リスクが1を超えると、発症との関連があるといえます。)。その相対リスクについて、例えば、男3.4、女1.8とする報告(浅野ら、1991年)、2.2ないし5.6とする報告(藤田、1992年)、男1.8、女1.9とする報告(李ら、1996年)などがあります。
そして、自然科学的な因果関係が証明できなくても、例えば、7~8割方、交通事故のストレスが原因だといえれば、損害賠償の範囲に含まれるとみるのが裁判所の考え方です(「高度の蓋然性」といいます。)。
そうすると、医学的な証明ができなくても、交通外傷によるストレスがくも膜下出血を発症させたと認められることもあり得るということになるはずです。