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ホーム法律の話(ブログ)交通事故よく問題となる傷病名から(医学的基礎) > 労災における業務上のストレスとくも膜下出血の関係に関するとらえ方

労災における業務上のストレスとくも膜下出血の関係に関するとらえ方

交通事故のストレスにより血圧が上がり、動脈瘤が破裂した場合に、交通事故とくも膜下出血は無関係といえるのかというのが前回の疑問でした。

この点は、労災保険の考え方が参考になります。
いわゆる「過労死」におけるくも膜下出血の発症と業務との因果関係(業務起因性といいます。)の問題です。

労災保険においても、以前は、過労といった業務上のストレスがあったからといって、くも膜下出血等の脳・心臓疾患の発症と業務との関係は認められないと考えられていました。

ところが、最高裁判所は、2000年の判決で、業務の過重な精神的負荷、身体的負荷が、血管病変を「自然の経過を超えて増悪させ、発症に至った」として、「過労」とくも膜下出血による「死」との関係を認めたのです

この最高裁判決を受けて、厚生労働省は、労災の認定基準を見直し、2001年、過労によりくも膜下出血等を発症し死亡した場合も、労災補償の対象となることを認めました。

この考え方は、交通事故にもあてはまるはずです。
交通事故による過重な精神的負荷、身体的負荷が、脳動脈瘤を「自然の経過を超えて増悪させ」、くも膜下出血発症に至った場合には、くも膜下出血発症も交通事故による賠償の対象とすべきだと思うのです。

実際、労災の認定基準には、くも膜下出血発症との相当因果関係を認め得る過重な業務の一つとして、「精神的緊張を伴う業務」が挙げられ、そのうち、「発症に近接した時期における精神的緊張を伴う業務に関連する出来事」として、「労働災害で大きな怪我や病気をした。」が挙げられています。
「大きな怪我や病気をした。」ことは、くも膜下出血を発症した原因になり得ることが示されているのです。